05.25TFC参戦の西川大和 韓国遠征前のインタビュー

15歳で、所属フリーのプロで、メチャクチャ強い――。北海道の総合格闘技界の異端児、西川大和選手。小学生の頃からPFCの大会に何度も出場し、大人を相手にまったくひるまない戦いを見せてきた。3月の末に韓国の初の海外での試合を終え、5月25日に迫った韓国での二戦目に向けて練習に励む西川選手に、初のインタビューを行った。

5歳から格闘技を開始。PFC出場が大きな一歩に

──まず、経歴について教えてください。5歳の頃からグラップリングを開始し、空手やボクシング、日本拳法など様々な格闘技をされていたとのことでしたが、格闘家を志したのはいつ頃でしょうか?

格闘家として稼いでいきたいと思ったのは小学校5、6年生の時ですね。動画でUFCファイターの戦いを観て、すごいなぁ、本当にこんな風に動けるようになるのかなって思ってました。
ちょうどその頃山本(喧一)会長にPFCの試合に出させてもらって。
それまでは夢のままかもしれないと思っていましたが、行けそうだなと思いました。

──PFCに出たことが大きな一歩だったのですね、

そうですね、周りから試合の度に成長してるだとか、吸収が早いねと言ってもらっていました。
それは小さいころからずっと色々な大人の話を聞いたり、お父さんに教えてもらったりというのもあったと思います。
携帯も持ってないしインターネットも見てなかったので、自分で技を覚えるしかなかった。
人から聞いたものを想像して、こうかな?ってやってみる。誰かが動画で技を見せてくれた時も、その場で全部記憶してました。これどうやったら動けるのかな?って練習して、それに関わる筋トレをして。
そうしたら調子良く動けるなという実感がありました。ただ試合では全部出せるわけじゃないですが…。
自分が試合をやるようになって、UFCの選手はすごいなと改めて思いました。緊張しても動けていますし、打撃で打ち合いになっても目を開いている。

──打撃の時、常に目を開けるのは難しい?

そうですね、はっきり開いている時もありますが、危なくなりすぎると細めてしまうことがあります。完璧には開けられていない。UFCの選手も目細くしてるときありますが、それも超えて完璧にしたいです。

ディフェンスには自信あり。今はグラップリングを強化中

──現在、北大や北海高校の柔道部など、色々な場所に稽古に行かれてますね。一日何か所ほど?

3部練(3か所で練習)ですね。休日が4部練。

──最近はグラップリングを強化しているらしいですが。

そうですね。海外でも長く続けて行きたいんですが、向こうはグラップリングや柔術が強い連中がゴロゴロいる。
打撃は今まで通り練習して、苦手な事を減らしていければと思います。ディフェンス面では負けてないかと思いますね。目は良いほうですし、小さい頃から反射神経ばかりやっていた。
というのは、自分より大きい人ばかりとやっていたから、一発食らったら重いんです。食らいたくなかったので、じゃあどうするか?と対策していったらディフェンスが身に付いたんです、オフェンスより先に。
だからほとんどパンチを食らったことはないです。
韓国での試合でも、相手から一度ダウンを取る前はほとんどパンチを食らいませんでした。だから試合が終わった後も自分で立って更衣室に戻っていきました。
皆に大丈夫なのか?って言われましたが、大丈夫でした。

──PFCの試合でも、一度もパンチを食らったことがないそうですね。

ないですね。

攻め続けた韓国での初試合。その姿勢が次なるチャンスへ

──3月31日に行われたTFCの試合についてお聞かせ下さい。動画を見ましたが、慎重に出方を伺っていた対戦相手とは反対に、西川選手はアグレッシブに攻めてましたね。惜しくも敗れてしまいましたが、実力差はあまりないように見えました。実感としてはいかがでしたか。

実力差はほとんど無かったと思います。ただ、戦略を間違えちゃった。戦略を失敗すると、強い選手でも負けてしまう。戦略が大事なのは、寝技も打撃でも同じですね。

──試合を動かしていたのは西川選手かなと思いました。

そうですね、でも戦略がちょっと外れちゃった。相手が一度ダウンした後、ワーっと行かないで距離を取っていれば良かったねといろんな人には言われました。やはり気持ちが強く出て。
相手が倒れてもすぐにかかっていくという気持ちでした。昔からスパーリングをやってる時に大きい人に殴られたり、結構いじめられてたので、絶対に倒してやるという気持ちが強くなった。
対戦相手に対して、例えばパンチ力のある選手だとか色々特徴があるじゃないですか?
緊張はするのですが、まったく怖いと思ったことはないんです。恐がったら何もできなくなりますし。
その代わり、緊張感は持つ。緊張感はビビりとは違って、相手が来る攻撃を集中してちゃんと見ること。
ビビるのは最初から距離をとったり、自分で組みに行かないで、判定で負けてもいいかなっていう人がやる事だと思います。

──前へ前へという姿勢が評価されて、次につながったんですね。

そうですね。韓国の人たちは打撃が好きなので、というのもあると思いますし。

大会場の賑わいが励みに。海外でも試合が一番の楽しみ

──初の海外試合でしたが、動画を見る限り入場も試合も堂々とされていましたね。実際、緊張はありました?

堂々としてました。PFCに出る時より緊張しませんでしたね。やっと世界に行けたっていうのが楽しくて、まったく緊張しませんでした。

──雰囲気も違いますしね。

人数が多い所の方が、お客さんの注目を集められるので緊張しないですね。小さい頃に空手の試合にも出てましたが、緊張感のある雰囲気の方が苦手なんです。周りに人がたくさんいて、ワーワーと楽しく見てくれた方が、気持ちが楽ですし楽しいです。

──自分の一挙手一投足で「ウォー」って歓声が上がったら気持ち良さそうですね。

そうですそうです! でかい会場で人がたくさん見てて。海外来たんだなーっていう実感はありました。

──いつかは大会場でやりたいですね。

そうですね、UFCだとかは大会場でやってますし、ボクシングだとかの有名な人のタイトルマッチは前の方の席が数千万もするんです。一番後ろの席で100万とか。どっちみちお金ないと観に行けない。自家用ジェット機で見に来てるようなセレブな人たちが観に来てるんです。

──そういう世界に行けるかもしれない。可能性は多いにありますからね。

行きますよ、そこまで。高校も行かないで目指してるので。それこそ皆から身体少し休めた方がいいよと言われますが、高校って基本休まないじゃないですか。高校に行ってるような感じで練習してるので、休むわけにはいかない。
僕の場合は高校、大学を飛ばしてもう職業としてやってる。少なくても一応給料をもらっているプロなので。ファイトマネーの額で言えばやっぱり日本より海外のほうが断然多いですね。韓国もすごいですし、UFCはその倍。シンガポールでも活発です。

──鞄一つで海外の色々な所に戦いに行く。ロマンがありますね。

面白いですよね。
ただ、「旅行できて楽しいね」って言われますが、試合の方が面白い。こないだの韓国でも試合後はどこも行きませんでした。周りの日本人の方は試合の前後も結構色々な所へ行ってましたが、旅行行ってるんじゃないんだよと思いますね。
次も試合前は練習してると思います。その辺の韓国の人捕まえて、いいからいいからって引っぱってきて(笑)
前回、減量と緊張で試合前もウォーミングアップできない選手が周りに結構いたんです。でも僕は普段から減量をしているような食事を摂っているので、減量と言っても米を抜くくらい。あまり苦じゃないんです。

焦らずに勝ちたい二戦目。練習の成果を発揮できれば

──5月25日に迫った次のTFC。どう戦って行きたいですか?

勝つのは前提なのですが、焦らないで、自分が技を出せるなというタイミングまで待つ。
得意なポジションに行ったとしても、距離を取るとかくっつくとかして。焦らずに相手の様子を見て何かやって、反応しなくなってきたら行こうかなと思います。
相手にはどんどんチクチクと嫌がらせをしながら(笑)
ローキック、蹴りも忘れずに。こないだの韓国での1R目より、もう少し時間は伸ばしても良い。あとは相手がヘトヘトになってフィニッシュ行けそうになったら、スパーリングで出しているような技を出したい。
失敗しても、相手が疲れていたら負けることはないので。ディフェンスしながら、自分がスパーリングでやってきたような技を余裕があればやりたいですね。とは言えそれがゴールじゃなく、まだまだ先があるので1試合1試合を大事にしたいですね。

自分で選んだ道だからこそ一日一日を無駄にしない

──高校へ進学せず、プロになると自分の意思で決められました。中学生の時より練習量は増えたかと思いますが、成長は感じますか?

実感はありますが、今は疲れが溜まっている分、万全な動きができていません。だからこそ試合は楽しみたい。練習では殴られた、極められたで良い。練習でかっこつけても試合で負けたら意味ないじゃないですか。

──練習ですからね、うまくできなくて当たり前ですよね。

当たり前なんですよ、だから練習ではなるべく自分の苦手なことをする。例えば自分がやられるポジションをわざと作って、相手が攻撃してくる状況でそれに対処できるようにする。

──中島体育センターの練習でも、極められてからの練習をやってましたね。

そうですね、わざと不利になって、そこからどう動くかをやってた。
「プロの西川大和が極められてるよ」みたいに言う人もいるかもしれませんが、練習だから極められたっていい。ディフェンスの日とオフェンスの日というのも決めていて、オフェンスの日は例えば6分の中で、6本全部取る。諦めてディフェンスに回るのではなく、ガッツリ全部取りに行く。
自分で休むということをしない。ディフェンスの日は自分で寝たりわざと技を失敗したりして、取られてから逃げる。
ガツガツ取りに行ったオフェンスの日は、練習後はもう食欲も失せますね。その時はもう食わないで寝ていいかな、プロテインでいいっしょ!と思いますが、父さんにバカか、食え!って言われます(笑)。

──最後に今後の目標を教えてください。

一番大きな目標はUFCチャンピオンです。もしなれなくても色々な団体で活躍して、格闘技で食べていければうれしいです。
夢や目標を持ってこれだけ時間を使っているので、いきなり他の仕事にいくのもできないですし、自分の心も許さない。
そのために、まずは15歳でTFCの最年少チャンピオンになることですね。

──ありがとうございました。これからも応援しています!

ありがとうございます。

≪取材を終えて≫

物腰は柔らかく、冷静沈着。そして時折、野心と負けん気の強さが見え隠れする西川選手。
取材をしてみて、プロの格闘家としての意識が完成されていることに驚いた。
自分の実力に対する洞察力、練習への取り組み方、食事内容、礼儀正しさ、支えてくれている人への配慮…。その強さの源は何なのか、さらに掘り下げたくなる魅力を持っていた。
今注目すべき選手なのは間違いない。今後も当マガジンでは西川選手の歩みを追って行きたい。

【プロフィール】
名前:西川 大和(にしかわ やまと)
生年月日:2003年12月6日
出身:札幌市
身長:170cm
体重:71kg
所属:フリー

この日2箇所目の稽古。

中島体育センターの格技室で、プロや一般人と共に柔術の練習。極められてからの逃げ方を何パターンも繰り返していた。

3箇所目は、ブラジリアン柔術を専門とする「ギムナシオン札幌」。西川選手の誘いでここへ出稽古に来るようになったメンバーも多数存在する。後ろに見えるのは、父の武彦さん。

打撃のスパーリングに付き合う西川選手。「いつも練習に付き合ってくれる大人たちがいるからこそ、成長できたんです」と父・武彦さんは言っていた。

ライター
under construction 縄文マスク PN


プロレス観戦をきっかけに、格闘技の世界に迷い込む。戦闘力を高めるために鍛錬中。雑誌ライター。